ものゝ問題である(酒はもう問題ではなくなつた)。
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・日向の羅漢様どれも首がない(清水寺)
・山道わからなくなつたところ石地蔵尊
 明日は明日のことにして寝ませうよ
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遍路山道の石地蔵尊はありがたい、今日は石地蔵尊に導かれて、半里の難路を迷はないで巡拝することが出来た。
今夜の宿も困つた、やつと蝋燭のあかりで、これだけ書いた、こんなことにも旅のあはれが考へられる。……

 十二月十三日[#「十二月十三日」に二重傍線] 曇、行程四里、大牟田市、白川屋( [#「 」に「マヽ」の注記]  )

昨夜は子供が泣く、老爺がこづく、何や彼やうるさくて度々眼が覚めた、朝は早く起きたけれど、ゆつくりして九時出立、渡瀬行乞、三池町も少し行乞して、普光寺へ詣でる、堂塔は見すぼらしいけれど景勝たるを失はない、このあたりには宿屋――私が泊るやうな――がないので、大牟田へ急いだ、日が落ちると同時に此宿へ着いた、風呂はない、風呂屋へ行くほどの元気もない、やつと一杯ひつかけてすべてを忘れる。……
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 痰が切れない爺さんと寝床ならべる
・孫に腰をたゝ
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