よう。
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・大霜の土を掘りおこす
 枯草ふみにじつて兵隊ごつこ
 うらゝかな今日の米だけはある
 さうろうとしてけふもくれたか
 街の雑音も通り抜けて来た
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 十二月十二日[#「十二月十二日」に二重傍線] 晴、行程六里、原町、常盤屋(三〇・中)

思はず朝寝して出立したのはもう九時過ぎだつた、途中少しばかり行乞する、そして第十七番の清水寺へ詣でる、九州西国の札所としては有数の場所だが、本堂は焼失して再興中である、再興されたら、随分見事だらう、こゝから第十六番への山越は□□□にない難路だつた、そこの尼さんは好感を与へる人だつた、こゝからまた清水寺へ戻る別の道も難路だつた、やうやく前の道へ出て、急いでこゝに泊つた、共同風呂といふのへはいつた、酒一合飲んだらすつかり一文なしになつた、明日からは嫌でも応でも行乞を続けなければならない。
行乞! 行乞のむづかしさよりも行乞のみじめさである、行乞の矛盾[#「行乞の矛盾」に傍点]にいつも苦しめられるのである、行乞の客観的意義は兎も角も、主観的価値に悩まずにゐられないのである、根本的にいへば、私の生存その
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