しなければウソだ。
道を訊ねる、答へる人の人間的価値がよく解る、今日も度々道を訊ねたが、中年の馬車挽さんは落第、若い行商人は満点だつた、教へるならば、深切に、人情味のある答を望むのは無理かな。
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しんせつに教へられた道の落葉
・つめたい雨のうつくしい草をまたぐ
大木に腰かけて旅の空
立札の下手くそな文字は「節倹」
山茶花散つて貧しい生活
坊さん二人下りたゞけの山の駅の昼(追加)
大金持の大樅の木が威張つてゐる
・空の爆音尿してゐる(太刀洗附近)
・たゝへた水のさみしうない
また逢つた薬くさいあんたで(追加)
・降るもよからう雨がふる
夕空低う飛んで戻た[#「戻た」に「マヽ」の注記](飛行機)
暮れてもまだ鳴きつゞける鵙だ
[#ここで字下げ終わり]
今夜は酔ふた、すつかり酔つぱらつて自他平等、前後不覚になつちやつた、久しぶりの酔態だ、許していたゞかう。
十二月九日[#「十二月九日」に二重傍線] 雨后晴、双之介居滞在(本郷上町今村氏方)
よい一日だつた、勧められるまゝに滞在した、酒を飲んで物を考へて、さてどうしようもないが、どうしようもないまゝ
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