か(自嘲)
 おわかれの言葉いつまでも/\
 炭坑町はガラ焚くことの夕暮
 あの木がある家と教へられた戸をたゝく
 ひとりのあんたをひとり私が冬の雨
 逢うてまだ降つてゐる
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次郎さんはほんたうに真面目すぎる、あまりつきつめて考へては生きてゐられない、もつとゆつたりと人間を観たい、自然を味はひたい、などゝ忠告したが、それは私自身への苦言ではなかつたか!

 十二月一日[#「十二月一日」に二重傍線] 曇、次郎居滞在、読書、句作、漫談、快飲、等々。

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 朝酒したしう話しつゞけて
・落葉掃かない庭の持主である(次郎居)
・撫でゝやれば鳴いてくれる猫( 〃 )
 猫はいつもの坐布団の上で
・捨炭車《スキツプ》ひとりで上下する月の捨炭《ボタ》山(改作)
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次郎さんは今日此頃たつた一人である、奥さんが子供みんな連れて、母さんのお見舞に行かれた留守宅である、私も一人だ、一人と一人とが飲みつゞけ話しつゞけたのだから愉快だ。
猫が一匹飼うてある、きい[#「きい」に傍点]といふ、駆け込み猫で、おとなしい猫だ、あまりおとなしいので低脳か
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