ボタ山もほがらかな飛行機がくる
 枯草に寝て物を思ふのか
 背中の夕日が物を思はせる
 たゞずめばおちてきた葉
 かうして土くれとなるまでの
・橋を渡つてから乞ひはじめる
 鶏が来て鉢のお米をついばもうとする
 いつも動いてゐる象のからだへ日がさす(サーカス所見)
 口あけてゐる象には藷の一きれ(  〃  )
 日向の餅が売り切れた
 何か食べつゝ急いでゐる
 枯草の日向で虱とらう
・乞ふことをやめて山を観る
 香春見あげては虱とつてゐる
・いつまでいきる蜻蛉かよ
 ボタ山の下で子のない夫婦で住んでゐる
・逢ひたいボタ山が見えだした
・法衣の草の実の払ひきれない
 枯草の牛は親子づれ
 ほゝけすゝきもそよいでゐる
 即[#「即」に「マヽ」の注記]きすぎるすゝきの方へ歩みよる
 落ちる陽のいろの香春をまとも
 鳴きやまない鶏を持てあましてる
・ボタ山のまうへの月となつた
 もう一度よびとめる落葉
 みんなで尿する蓮枯れてゐる
 夕空のアンテナをめあてにきた
[#ここで字下げ終わり]

 十一月卅日[#「十一月卅日」に二重傍線] 雨、歓談句作、後藤寺町、次郎居(なつかしさいつぱい)

果し
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