さよ、友のあたゝかさよ、酒のうまさよ。
今日は香春岳のよさを観た、泥炭山《ボタヤマ》のよさも観た、自然の山、人間の山、山みなよからざるなし。
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あるだけの酒飲んで別れたが(星城子君に)
眼が見えない風の道を辿る
・十一月二十二日のぬかるみをふむ(歩々到着)
・夜ふけの甘い物をいたゞく(四有三居)
傷づいた手に陽をあてる
晴れきつて真昼の憂欝
はじめての鰒のうまさの今日(中津)
ボタ山ならんでゐる陽がぬくい
・ひとすぢに水ながれてゐる
・重いドアあけて誰もゐない
枯野、馬鹿と話しつゞけて
憂欝を湯にとかさう
・地下足袋のおもたさで来て別れる
ボタ山の下でまた逢へた(緑平居)
また逢うてまた酔うてゐる( 〃 )
・小菊咲いてまだ職がない(闘牛児君に)
留守番、陽あたりがよい
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駅で、伊豆地方強震の号外を見て驚ろいた、そして関東大震災当時を思ひ出した、そして諸行無常を痛感した、観無常心が発菩提心となる、人々に幸福あれ、災害なかれ、しかし無常流転はどうすることも出来ないのだ。
緑平居で、プロ文士同志の闘争記事を読んで嫌な気がし
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