注記]、けつくそれをよい事にして山へ登る、源三郎さんはりゆうとした現代紳士型の洋装、私は地下足袋で頬かむりの珍妙姿、さぞ山の神――字義通りの――もおかしがつたであらう。
下関から眺めた門司の山々はよかつたが、近づいて見て、登つて観て、一層よかつた、門司には過ぎたるものだ。
『当然』に生きるのが本当の生活だらうけれど、私はたゞ『必然』に生きてゐる、少くとも此二筋の『句』に於ては、『酒』に於ては!
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・燃えてしまつたそのまゝの灰となつてゐる
風の夜の戸をたゝく音がある
風の音もふけてゐる散財か
更けてバクチうつ声
あすはあへるぞトタン屋根の雨
・しんみりぬれて人も馬も
夢がやぶれたトタンうつ雨
・きちがい日和の街をさまよふのだ
・ま夜中の虱を這はせる
あの汽車もふる郷の方へ音たかく
地図一枚捨てゝ心かろく去る
□
すこし揺れる船のひとり
きたない船が濃い煙吐いて
しぐるゝ街のみんなあたゝかう着てゐる
しぐるゝや西洋人がうまさうに林檎かじつてゐる
あんな船の大きな汽笛だつた
しぐれてる浮標《ブイ》が赤いな
□
風が強い大岩小岩
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