たが菊の見事さよ(ハジカレは術語、御免の意味)
 お経とゞかないヂヤズの騒音(或は又、ヂヤズとお経とこんがらがつて)
 風の中声はりあげて南無観世音菩薩
・これでもお土産の林檎二つです
 火が何よりの御馳走の旅となつた
  改
 紅葉山へ腹いつぱいのこ[#「こ」に「マヽ」の注記]し
・藪で赤いは烏瓜
 坐るよりよい石塔を見た
・ならんで尿する空が暗い
 また逢ふまでの山茶花を数へる
・土蔵そのそばの柚の実も(福沢旧邸)
[#ここで字下げ終わり]

 十一月廿三日[#「十一月廿三日」に二重傍線] 曇、時雨、下関市、地橙孫居。

相変らずの天候である、朝の関門海峡を渡る、時雨に濡れて近代風景を観賞する、舳の尖端に立つて法衣を寒風に任した次第である、多少のモダーン味がないこともあるまい。
門司風景を点綴するには朝鮮服の朝鮮人の悠然たる姿を添へなければならない、西洋人のすつきりした姿乃至どつしりした姿も、――そして下関駅頭の屋台店(飲食店に限る)、門司海岸の果実売子を忘れてはならない。
約束通り十時前に源三郎居を訪ふたが、同人に差閊が多くて、主客二人では句会にならないで[#「いで」に「マヽ」の
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