尋ね歩いて、源三郎居の御厄介になる、だいぶ探したが、酒屋のおかみさんも、魚屋のおやぢさんも、また若い巡査も(彼は若いだけ巡査臭ぷん/\であつたが)私と源三郎さんのやうな中流以上の知識階級乃至サラリーマンとを結びつけえなかつたのはあたりまへだらう。
源三郎さんは――奥さんも父君も――好感を持たないではゐられないやうな人柄である、たらふく酒を飲ませていたゞいて、ぞんぶん河豚を食べさせていたゞいて、そして絹夜具に寝せていたゞいた。
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 けふのべんたうは野のまんなかで
 なつかしくもやはらかいフトンである(源三郎居)
・蒲団ふうわりふる郷の夢( 〃 )
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駐在所で源三郎居の所在を教へられて、そこへの石段を上つてゆくと、子を負つた若い奥さんが下つて来られる、それが源三郎さんのマダムだつた、これは句になりさうで、なか/\まとまらない、犬の方はすぐ句になつたが!

 十一月廿日[#「十一月廿日」に二重傍線] 曇、時雨、下関市行乞、本町通り、岩国屋(三〇・中ノ上)

朝風呂に入れて下さつたのはありがたかつた、源三郎さんといつしよに出かける、少し借りる(何し
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