れが客の多い宿ならば、みんな儲けだしてゐる。
友人からのたより――昧々居で受け取つたもの――をまた、くりかへしくりかへし読んだ、そして人間、友、心といふものにうたれた。
同宿七人、同室はおへんろさんとおゑびすさん、前者はおだやかな、しんせつな老人だつたが、後者は無智な、我儘な中年者だつた、でも話してゐるうちに、私といふものを多少解つてくれたやうだつた。
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・別れて来た道がまつすぐ
酔うて急いで山国川を渡る
・つきあたつてまがれば風
・別れきてさみしい濁酒《ドブ》があつた
タダの湯へつかれた足を伸ばす
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十一月十八日[#「十一月十八日」に二重傍線] 曇、宇ノ島八屋行乞、宿は同前、いゝ宿である。
行乞したくないけれど九時から三時まで行乞、おいしい濁酒を飲んで、あたゝかい湯に入る、そして寝る、どうしても孤独の行乞者に戻りきれないので閉口々々。
十一月十九日[#「十一月十九日」に二重傍線] 晴、行程三里、門司、源三郎居、よすぎる。
嫌々行乞して椎田まで、もう我慢出来ないし、門司までの汽車賃だけはあるので大里まで飛ぶ、そこから広石町を
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