せるよりも
  ホイトウ坊主がホントウなるらん

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酔来枕石 谿声不蔵
酒中酒尽 無我無仏

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見たまゝ、
聞いたまゝ、
感じたまゝの、
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野衲、
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山頭火
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 十一月十七日[#「十一月十七日」に二重傍線] 晴、行程一里、宇ノ島、太田屋(三〇・中ノ上)

朝酒は勿躰ないと思つたけれど、見た以上は飲まずにはゐられない私である、ほろ/\酔うてお暇する、いつまたあはれるか、それはわからない、けふこゝで顔と顔とを合せてる――人生はこれだけだ、これだけでよろしい、これだけ以上になつては困る。……
情のこもつた別れの言葉をあとにして、すた/\歩く、とても行乞なんか出来るものぢやない、一里歩いて宇ノ島、教へられてゐた宿へ泊る、何しろ淋しくてならないので濁酒を二三杯ひつかける、そして休んだ、かういふ場合には酔うて寝る外ないのだから。
此宿はよろしい、木賃宿は一般によくなつたが、そして客種もよくなつたが、三十銭でこれだけの待遇をうけると、何となくすまないやうな気もする、しかも木賃宿は、そ
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