た、観賞記は別に『秋ところ/″\』の一部として書くつもり――三里下つて、柿坂へついたのが一時半、次の耶馬渓駅へ出て汽車に乗る、一路昧々居へ、一年ぶりの対面、いつもかはらない温情、よく飲んでよく話した、極楽気分で寝てしまつた。……
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霜をふんであんな[#「な」に「マヽ」の注記]の方へ
・山を観るけふいちにちは笠をかぶらず
・山の鴉のなきかはす間を下る
・小鳥ないてくれてもう一服
その木は枯れてゐる蔦紅葉
もう逢へまい顔と顔とでほゝゑむ
山の紅葉へ胸いつぱいの声
けふのべんたうは岩のうへにて
・藪で赤いのが烏瓜
・岩にかいてあるはへのへのもへじ
・寝酒したしくおいてありました(昧々居)
・また逢へた山茶花も咲いてゐる(昧々居)
・蒲団長く夜も長く寝せていたゞいて( 〃 )
[#ここで字下げ終わり]
十一月十六日[#「十一月十六日」に二重傍線] 曇、句会、今夜も昧々居の厄介になつた。
しぐれ日和である(去年もさうだつた)、去年の印象を新らたにする庭の樹々――山茶花も咲いてゐる、八ツ手も咲いてゐる、津波蕗もサルピヤも、そして柿が二つ三つ残んの実を持つたまゝ
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