さんいつしよに寝てゐる
・支那の子供の軽業も夕寒い
・夜も働らく支那の子供よしぐれるな
 ひとりあたゝまつてひとりねる
[#ここで字下げ終わり]

 十一月十二日[#「十一月十二日」に二重傍線] 晴、曇、初雪、由布院湯坪、筑後屋(二五・上)

九時近くなつて草鞋をはく、ちよつと冷たい、もう冬だなと感じる、感じるどころぢやない、途中ちら/\小雪が降つた、南由布院、北由布院、この湯の坪までは四里、あまり行乞するやうなところはなかつた、それでも金十四銭、米七合いたゞいた。
湯の平の[#「湯の平の」はママ]入口の雑木山もうつくしかつたが、このあたりの山もうつくしい、四方なだらかな山に囲まれて、そして一方はもく/\ともりあがつた由布岳――所謂、豊後富士――である、高原らしい空気がたゞようてゐる、由布岳はいい山だ、おごそかさとしたしさとを持つてゐる、中腹までは雑木紅葉(そこへ杉か檜の殖林が割り込んでゐるのは、経済的と芸術的との相剋である、しかしそれはそれとしてよろしい)、中腹から上は枯草、絶頂は雪、登りたいなあと思ふ。
此地方は驚くほど湯が湧いてゐる、至るところ湯だ、湯で水車のまはつてゐるところも
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