第六感に到つて、多少話せる。
朝寒夜寒、山の谷の宿はうすら寒い、もう借衣ではいけないらしい、どなたか、綿入一枚寄附してくだされ、ハイカシコマリマシタ、呵々。
これは行乞ヱピソードの一つで――嘘を教へる、しかも母が子に嘘を教へる、――さういふ微苦笑劇の一シーンに時々出くわす――今日もさういふことがあつた、――御免、お御免、留守、留守と子供がいふ、子供はさういふけれど母親はゐるのだ、ゐて知らない顔をしてゐるのだ、――子供は正直にいふ、お母さんが留守だといへといつたといふ――多分、いや間違ひなく、彼女は主婦の友か婦女界の愛読者だらう、そして主婦の友乃至婦女界の実現者ではないのだらう。
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・いちにち雨ふり一隅を守つてゐた(木賃宿生活)
あんたのことを考へつゞけて歩きつゞけて
・大空の下にして御飯のひかり
・貧しう住んでこれだけの菊を咲かせてゐる(改作)
阿蘇がなつかしいりんだうの花[#「の花」に「(ひらく)」の注記]
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人生の幸福は健康であるが、健康はよき食慾とよき睡眠[#「よき食慾とよき睡眠」に傍点]との賜物である、私はよき――むしろ、よすぎ
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