の瞳に、まだ子供ツぽい光があふれている佐太郎は、謎でも解くようにその眼をパチ/\とまたたいた。
「そりや、女ツてやつはな、いやな奴だからつて、必ずしもいやな顔は見せないさ、自分を誰にでも好かれる女だと思いこみたいのが、女の本性だからな」
「そうかな」
参つたというように、佐太郎は小首をかしげてうなずいた。
なるほどそう言えば、いやなのを無理におさえて素振りに出さないという硬い顔つきをしていた初世の、この間の晩の幾度かの場合を思い出すことができた。
「それほど好かれていない男だつて、そんなことになつたときには大概大丈夫なもんだよ、それが飽くまでも肱鉄砲と来たんだから間違いなくきらわれている証拠だよ、はツはツは」
これと見こんだら、どんな女でもものにしてみせると、つね/″\豪語している秀治は、そういうつまらない自惚から、女というものをそんな風にかんたんに考えているのだつた。
「はツはツは――あんな者、あつさりあきらめろよ、娘なんて、いくらでもごろ/\してるじやないか」
女にかけてはまるでウブな佐太郎は、したたか者といわれる秀治にそんな風にあしらわれると、なるほど女というものはそんな
前へ
次へ
全24ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 永之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング