ている。
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美味《うま》い不味《まず》いは無意味に成り立っているものではない。栄養の的確なバロメーターである。
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料理は自然を素材にし、人間の一番原始的な本能を充《み》たしながら、その技術をほとんど芸術にまで高めている。
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「人はその食するところのもの」と、ブリア・サヴァラン(『味覚の生理学』の著者)はいっている。その人の生活と、大きく考えれば人生に対する態度が窺《うかが》われる。
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ほんとうにものの味がわかるためには、あくまで食ってみなければならない。ずっとつづけて食っているうちに、必ず一度はその食品がいやになる。一種の飽《あ》きが来る。この飽きが来た時になって、初めてそのものの味がはっきり分るものだ。
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料理の本義といったところで、別段むずかしいことはない。要するに美味《うま》いものを食うことである。しかし、美味いものといっても、値段の高い安いには関係がない。美味いものといえば、工夫によると思う者もあるだろうが、工夫だけでもだめだ。
料理のよしあしは、まず材料のよしあしいかんによる。材料の選択次第である。だから、
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