用事をするが、目をはなすと、さっそく怠けている。
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どうしても料理を美味《おい》しくつくれない人種がある。私はその人種を知っている。その名を不精者《ぶしょうもの》という。
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餅《もち》の中にも食べられぬ餅がある。やきもち、しりもち、提灯《ちょうちん》もち、とりもち。
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煮ても焼いても食えぬというしろもの[#「しろもの」に傍点]がある。せっかくの材料を煮たり焼いたりしたために、かえって食えなくしてしまう人もいる。お化粧したために、せっかくの美人がお化けになってしまうことだってある。
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ラジオで料理講習しているのをときどき聞いている。まさか豚や犬に食わす料理の講習ではあるまいな。豚や犬に食わせるようなものを配給したりするから、そこでラジオも、豚や犬に食わす料理を放送せねばならなくなるらしい。これは辛抱《しんぼう》料理ばかりだ。そして今に、優生学の講習の後で、おそらく種男を募集するつもりだろう。
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客になって料理を出されたら、よろこんでさっそくいただくがよろしい。遠慮しているうちに、もてなした人の心も、料理も冷《さ》めて、
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