不味《まず》くなったものを食わねばならぬ。しかも、遠慮した奴《やつ》にかぎって、食べ出せばたいがい大食いである。
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腹が空《へ》ってもひもじゅうない、というようなものには食わせなくてもよい。
腹がいっぱいでもまだ食いたい、というようなやつにも食わせなくてもよい。
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食事の時間がきたら食事をするという人がある。食事の時間だから食べるのではなく、腹が空ったから食べるのでなければ、美味《おい》しくはない。美味しいと思わぬものは、栄養にはならぬ。美味しいものは必ず栄養になる。
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心配するな、舌のあるうちは飢えぬ。
だが、女と胃袋には気をつけよ。
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腹が空っては戦《いく》さが出来ぬ。戦さをしなくなった日本に、腹が空ることだけを残してくれたのは悲劇だろうか。そんなら、なにを食べても美味しくはないという金持の生活は喜劇か。悲劇は希望を求め、喜劇は希望を忘れている。
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一に加える一は二なり。万歳《まんざい》は一加える一は三。万歳は二人でしゃべる。二人でしゃべるから一人でしゃべる時の二倍のボリュームがあるかというと、さにあらず、そ
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