。こんなふうな人が多々あると、貴族は貴族同士、富豪《ふごう》は富豪同士で楽しめるわけだが、いずれの国にあっても、そうなってはいない。こうなると貧しき人々が、貧しき人々の好む料理をつくることが一番幸福であるようだ。
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野菜は新鮮でなければならぬ。八百屋《やおや》に干枯《ひから》びて積んであるものを買わず、足まめに近くに百姓家《ひゃくしょうや》があれば自分で買いに行くがいい。かえって安価につくかも知れない。
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台所のバケツにほうれん草を二日もつけておく人がある。ほうれん草は、台所用いけばなにあらず。
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砥石《といし》は庖丁《ほうちょう》に刃をつける時に使え。使用後の手入れをちょっと怠《なま》けると、すぐに庖丁はさびのきものをきてしまう。たまねぎも、きものを脱がして食べるのだから、庖丁も、きものを着たまま使うな。
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さかなを焼く時は……、
さかなというやつは、おもしろいものだ。じっと目を放さずに見つめていると、なかなか焼けない。それなのに、ちょっとよそ見をすると、急いで焦《こ》げたがる。
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人間は目をつけていると、急いで
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