と思って参考のために見物に行ってみたが、ひと口にいってしまえば、醜悪そのものの陳列であった。もちろんみな苦心していることは認められる。しかし、その苦心の跡をみると、要するに彼等がいかに無知であるかということが語られるばかりという他はない。物の道理に従って素直に誠実に料理をやっているものが一人としてないのである。なるほど、技術技巧に凝ったものがあるが、要するにそれらは児戯に等しいと評するの他はない。児戯に等しいものはまだよい方であって、中には悪ふざけに走ったものが非常に多い。それで得意になっているところを見ると、みながみな悪悟りをしてしまっているのである。ところが、この料理展覧会が確か五階にあって、六階にはその時ちょうど、木彫や水彩画の展覧会が開かれていた。この方はさすがに美術の専門家だけに下の料理展覧会に比べるとはるかに美術的であった。しかし、その内容をよくよく点検すると、そのつまらなさ加減、まったく階下の料理と同じであったといわざるを得ない。観音様を彫ればそこらの芸妓|面《づら》をしていたり、恵比寿大黒が落語の百面相であったり、所詮われわれの脳裡《のうり》にあるものを表現してはいない
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