の理由を具体的に出来得るかぎり読者、否、翁が心の底から得心されるべく述べたてて翁の廃窯に未練なからしめんと考えているのである。それには御迷惑でも住友寛一氏の製陶失敗例も出ようし、頼母木《たのもぎ》桂吉氏の九谷窯? の話も自然出さないわけにはいかないであろう。が止むを得ざるかかわり合いとしてお許しを願いたい。蓋《けだ》し故意に悪口を弄《ろう》するわけでないことはもちろんである。この点、なにかの御参考にならないものでもないとして、しばらく御判読を希望して止まない。

      (二)

 なぜ素人は窯を築いてはいけないのか、……これが答えはいうまでもなく、それは所詮出来ない相談であるからだと、私はいつもの憎まれ口をききたいのである。とはいってもその人の、望みの大きさ次第では一概にいって退《の》けたものでもないが、少なくとも前山翁のような好者であってはその望むところの最後のものが大きいとしなければならないから、要は出来ない相談だといわざるを得ないのである。伊賀に手をつけた某氏にしても住友、岩崎なんという富者にしても、頼母木氏のような好みの人々にしても所詮は出来ない相談である。これらはいずれ
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