……指図次第で出来るよ。この一言で私の陶製観をやっつけ得られるつもりらしく平気で怒号されたのだが、なにがなんとしても前山さんの芸術無理解の実体が人前にさらけ出されるまでで、一向に私をやっつける痛棒にはならなかった。しかも笑止に終わってしまわざるを得なかった。ここで私の卑見を披瀝すると、
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一、前山さんの第一の錯覚は一代の小堀遠州宗甫と御自分を同等に扱われたこと。
一、職人は職人でも遠州時代の職人と今日この頃、しかもそこばくのことでいいなりになってくれる職人とはその質が違う、腕が違う、心が違うという点に不注意であったこと。
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そしてその前山さんが陶製上の予備知識を絶無とはいわないが殆どというも過言ではないほど斯道《しどう》知識をもたれなかったこと。
これらが私をして前山さんに製陶計画抑止の勧告を余儀なくせしめたゆえんなのであった。
これだけでは、不遜《ふそん》魯山人、未だに人を馬鹿にしよると翁をしてまたしても激怒さすことになるやも知れないが、私は行き届かないながらも、これより順々徐々……「素人製陶本窯を築くべからず」
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