て、そうした外貌的のものであって、理知的なものであって、内容というものは一向ありはしない、だからいくらそれがうまく出来ましたところで芸術の方には入らない。そこでこれを芝居などに致しましても、私は残念ながら見ないのでありますが、芸術的生命を持ったという最近の俳優といえばおそらく団十郎だろうと思うのであります。これは団十郎の写真を見ましても、団十郎の書いた字を見ましてもかなり芸術的なものが表現されております。それで彼にして初めて芸術的であったといい得ると思うのであります。それもどの辺までの芸術家であったか、それは私は見ないのでありますからわかりませぬが、この芸術という的《まと》に致しましても、ここにたくさんの層があります。こういうふうに幾千とも幾万ともいえない層があるのでございます。そこで真ん中に中心があります。ここに当たるところの芸術が、ここになると的《てき》とはいわない、芸術といってよいと思います。ここに至ると、推古仏のものとか、あるいは法隆寺の仏画に表われている壁画とか、そういうようなもっとも調子の高いものを心的としてよいと思うのであります。そういうものでありますから芸術的なものはた
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