る。そこで大体において古い物は間違いのない相場がついているようであります。それはなにによって相場がついているかというと、やはり今申し上げたように美術上の価値、美術的にそれだけの価値があるということ、そこで美術と申しますと、この頃は工芸美術とかいうような言葉が盛んに流布されておりますが、また一面には純正美術という言葉もありますが、純正美術と工芸美術とどう一体違うかといいますと、これは簡単に申しますと、工芸美術と申しておりますのは、職工的であるということ、それから純正美術だと申しておりますのは、芸術的であるといってよいと思います。
それで、それならばどうしてそういうようなものを区別するのかということになりますが、それも故ないこともないと思うのであります。同じ美術に致しましても、一方は芸術的であり、一方は職工的であるというようなことがいえるのでありまして、よく何々的と申しますが、的ということはとりもなおさず「まと」ということでありまして、これは弓やなにかを引きます時に的《まと》がありますが、これが芸術の一つの的である。ところが弓を引きます時に芸術に向かって弓を引くのもあります。それから職工
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