ネクタイは一円のネクタイ、三円のネクタイは三円のネクタイの美量的値打ちがある。これは一遍自分が験《ため》してみると分ります。シャツでも三円のシャツを買って暖かいと思っても、今度十円のやつを買うとまたそれだけよい。それが五十円のもの、八十円のものとなって、ついに本当の駱駝《らくだ》のシャツが一番よいということになる。全く体験すると一番よく分る。茶碗もその通りであります。そこで金持ちでありますがやはり、金を尊ぶ人程かえってわれわれ貧乏人から見て金を大事にする人が多いのでありますが、その金を尊ぶ金持ちなる者なかなかたやすく五万も十万もの金を出すものではありませぬが、それにかかわらず土で出来たところの茶碗に莫大《ばくだい》な金を出すのであります。これは相当美術を認識しているところからであります。直接目で認識しているもの、常識的に世間なみに認識しているもの、盲目的に有頂点になり人におだてられて買う者などいろいろあります。が結局は古陶磁の値段の高いということは美術品としての価値が高いのだと認めているのであります。値段の一番高いものは最高美術に値することだと思われているのであります。
それでこの古
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