で青磁の香炉というものは陶磁器の中で一番値段が高いということになっております。それは自分で実験してみるとそのことがよく分るのであります。なるほど他のものを持っていってもどうしても納まりがつかないことがよく分る。

 ですからその次に古陶磁の高いのは茶碗でありますが、御承知の抹茶茶碗でありますが、これは茶の会を致しました時に一番晴れがましいものであります。次にさらに晴れがましいのはなにかと申しますと床の間の掛け物であります。どれもこれも晴れがましいのでありますが、とりわけ主役を致しますものは床の掛け物であり、飲ますところの茶碗である。その茶碗が美術的価値を多く有するということは、その茶会をもっとも効果あらしめることになるのでありまして、自然よい茶碗が欲しいことになります。その茶碗も一つ二つを見ておりますとこれもよいな、これもよいなということになりますが、さてここにこれが一万円、これが三万円、これが十万円と区切りして並べるということになりますと甲乙がよく分るのであります。これはみなさんが、失礼なお話をするようでありますが、靴を一足お買いになりましても、ネクタイをお買いになりましても、一円の
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