う場合に使えるかと申しますと、絵でいえば最高なもの、もうこれ以上よい絵はない、これ以上の装飾は日本装飾としてはもうないという位に装飾が施されました時に、その床の間の、卓の名だたる黒文字の卓がありますが、この卓の上に載る香炉というものは青磁の他にはなんにもないものであります。それで一番よいものを一番調子の高い室内装飾として並べた時に、その香炉はなんの香炉が一番適するかというと、青磁の香炉でなければ納まらない。それは物の分った時で、分らなければこの方がおもしろいとかいう一部的の香炉もたくさんありましょうが、よく物が分りますと、鑑賞が行き届き、物の調和ということがよく分りましたら、青磁をぽんと床の間におかないと納まりがつかない。青磁は実に品がよく、近寄って見ると作がよろしい、全体が納まってしまう。他のものではどうしても納まりがつかぬそういう意味におきまして、だんだんと金が出来て、だんだんと立派な家が出来て、立派な道具が家に殖えてきまして、貴人を招待でも致しました時には床の間に青磁の香炉がどうしても要るようになってしまう。そこで相当高くても青磁が欲しいというようなことになる。こういうような関係
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