れて通って来る者ばかりといって過言《かごん》ではない。
しかし、設備は充分、主人はおもしろいが寿司そのものの作品価値をどの程度持ってゆくかを検討すると――これをわたしはいろいろの点で究明しようとするのだが――まずどこへ出しても、決しておくれをとるものでないということは確かである。しかし、残念ながら新富《しんとみ》支店に劣る点なしとはいい難《がた》い。
材料――主として魚介の目利《めき》きの点においては、ある程度みっちゃんが優れているように思う。といっても、双方それぞれに特徴があって、米を炊《た》かしてはだんぜん久兵衛《きゅうべえ》が優れている。海苔《のり》を買わせても彼が優《まさ》っている。新富みっちゃんは魚をみることにわたしは感心している。なかなかの目利きであるが、どうも海苔の選定と飯《めし》の炊き方は久兵衛に劣るとわたしはみている。その理由は、みっちゃんという人物が元来大阪、京都で育っている人間であるため、海苔選定にはどうも目の利かないところがあって、玉に瑕《きず》というところである。用いるところの酢はというと、双方ともまず似たりよったりで大差はないが、酢加減となると、赤酢《あ
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