握り寿司の名人
北大路魯山人

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)寿司屋《すしや》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)安田|靱彦《ゆきひこ》さん

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いかさま[#「いかさま」に傍点]
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 東京における戦後の寿司屋《すしや》の繁昌《はんじょう》は大《たい》したもので、今ではひと頃の十倍もあるだろう。肴《さかな》と飯《めし》が安直《あんちょく》にいっしょに食べられるところが時代の人気に投じたものだろう。しかし、さて食える寿司となるとなかなか少ない。これは寿司屋に調理の理解がないのと、安くして評判をとるために粗末《そまつ》になるからだろう。
 現に新橋付近だけでも何百軒とあるであろう。この中で挙げるとなると、昔、名を成した新富《しんとみ》その弟子の新富支店、久兵衛《きゅうべえ》、下《くだ》って寿司仙《すしせん》くらいなものだろう。安田|靱彦《ゆきひこ》さんが看板を書いてるのもあるが、これは主人が作家でないらしくすべての上で私の気に入らない。
 いったい寿司のウマイマズイはなんとしても
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