魚介原料の問題で、第一に素晴らしいまぐろが加わらなければ寿司を構成しない。その他、本場《ほんば》ものの穴子《あなご》の煮方《にかた》が旨《うま》いとか、赤貝《あかがい》なら検見川《けみがわ》の中形《ちゅうがた》赤貝を使うとかで、よしあしはわけもなくわかるが、とにかくまず材料がよくなくては上等寿司には仕上がらない。海苔《のり》もよくなければいけないのは勿論《もちろん》である。海苔も部厚《ぶあつ》なものが巻きに適するが、厚いものにはよい物がないが部厚でありながらよい物を備える必要がある。「米」これは福島|辺《あたり》が一等で、新潟のも使える。しかしその炊《た》き方――程度がむずかしい。酢は米酢《よねず》と称するものが一番で、関西寿司の用うる白酢《しろず》ではだめだ、飯に三分づきくらいの色がつく酢が旨い。それから飯の味付けは、上方《かみがた》式に米の中に昆布《こぶ》、砂糖などでいろいろ加味しては江戸前《えどまえ》にはならない、塩、酢、だけの味付けが本格である。また飯の握りの大きいのは安物《やすもの》である。大きく握るものにろくなすしはない。小握りが上等品となっている。一等品は贅沢屋《ぜいたく
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