ャラおやじだが、雷だけは性に合わんのだな! と、子供心にも、憐れんでいてくれる様子である。
ゴロゴロと遠くの方でやり出すと、大丈夫だヨ、大丈夫だヨ、お父さん! 今日はこっちの方角だから、そう大して、鳴らないよ! と、中学二年の末っ子などは、御注進に駈けつけて来てくれる。
「バカバカ、何言ってる、大きな声を出して! そんなことなんぞ、お父さんは心配してるんじゃない!」
と、えらそうな顔をして見せたっておっつかぬ。
「なァンだい、人がせっかく、親切に教えに来てやったのに! さっきから、そんなところに突っ立って、空ばっかり見てるじゃないか!」
と、子供は膨れっ面《つら》をする。困ったオヤジです。いくら体裁をつくったって、子供の方がよく知っとる。
弱将の下、強犬なし
私は、デカという、頗《すこぶ》るもって強豪な中型の秋田犬を飼っている。こいつのオヤジは、昔間違って、狼罠《おおかみわな》にかかってキャンキャン啼《な》き叫んでいたが、誰も助けに来てくれないと知ると、罠にかかった自分の脚を、自分で食い切って、三本脚でビッコ引き引き戻って来たという剛《ごう》のものだけに、このデ
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