雷嫌いの話
橘外男
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鬱陶《うっとう》しい
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一度|酷《ひで》え
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「答+りっとう」、第4水準2−3−29]
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びしょびしょと、鬱陶《うっとう》しい雨が降っている。雨垂れの音を聞きながら、私は、このペンを握っているのであるが、この文章が雑誌に載って、世の中へ出る時分には、カラッと晴れた暑い夏がやってくると思うと、私は、何ともいえぬ憂鬱《ゆううつ》な気持になってくる。
夏が、厭《いや》なのではない。夏につきものの、ゴロゴロピシャに、また二、三カ月、悩まされなければならぬのかと思うと、心底、気持が暗くなってくる。
いつか、私のところへ来たある雑誌の記者が、あなたは雷がお嫌いだそうですね? と空っとぼけて聞くから、まさかにいい年をして、初めて逢った記者クンに、ほんとうのことをいって、こいつ臆病な奴だなんて思われるのは敵《かな》わ
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