んから、ええまあね、あんまり好きな方ではないでしょうねと、他人事《ひとごと》みたいな顔をしてくれたら、へえそうですかね、その程度のお嫌いなんですかね? 私はまた、青い顔をして蚊帳《かや》でもお吊りになるんだと思ってたんですがね。だって小説家のKさんのところへ行きましたら、そうだねえ、まず雷嫌いの横綱は、橘氏だろうね。あるいは、大関くらいかも知らんが、関脇とは下らんよ! って、笑ってられましたからねと、大真面目にいわれて、返事に困ったことがある。ヘッポコ小説家だから、小説の方はなかなか横綱までゆかぬが……横綱どころか! フンドシ担ぎも覚束《おぼつか》ないが、ほほう、してみると、雷の方ではいつの間にか、横綱の近くまで出世してるのかな! と、苦笑したことがある。

      子供の前で顔色なし

 横綱だか、取り的《てき》だか知らんが、ともかく、雷はイヤですね、実に厭《いや》だ。ゴロゴロピカリとくると、もう生きた心地はせん! いい年をして、子供たちの手前、面目ないから、別段戸棚に潜《もぐ》るわけでもなければ、蚊帳《かや》を吊るわけでもない。平気な顔を装うて、机の前に坐ったり、人と話はしてい
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