な人騒がせな、迷惑極まるものをゴロゴロピカピカ至るところに暴れさせるのだろうか? と、私は慨嘆これを久しゅうしたことであった。カタコトの英語を振り廻して難儀しながら外国人にまで雷のことを聞く男であったから私はもちろん、日本人にはなおのこと、聞いてみる。
 時に、どうです、あなたのお国の方は、雷は酷《ひど》いですかね? なぞと、他人事《ひとごと》みたいな顔をして聞いてみる。そこで今、その蘊蓄《うんちく》の一端を羅列してみると、まず満州、昔はサッパリ鳴らなかったが、日本人が入り込むようになってから、大分鳴り出したという話。ただし、あんまり強くはねえそうだ。次は札幌を中心とした北海道、これも以前はあまり鳴らなかったが、最近は内地並みに鳴り出したという話。もちろん酷いことはないであろう。京都は酷い。熊本も酷い。甲府も酷い。殊に酷いのは、富士山麓地方。
 関東では、日光から出て、宇都宮方面へ流れ出してくる雷雲。負けず劣らず酷いのが、伊香保《いかほ》を中心として榛名《はるな》をめぐって、前橋、高崎あたりを襲うやつ。この辺のは、ガラガラゴロゴロなぞという生易《なまやさ》しい音ではない。ズバン! ズバ
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