湿っぽくて日向《ひなた》臭くて、汗臭くてムンムンするような蒲団《ふとん》を、亭主から剥《は》ぎ取って頭からひっかぶって、震えていた。酔狂な! と、後で散々私は妻から笑われたが、酔狂にそんな真似《まね》ができますか!
半分死んだ気で頭を抱えてたのを、未だに忘れることができぬ。
何でも、この時の大雷雨は、逗子鎌倉地方では、八十年ぶりとかいうことであった。鎌倉の八幡宮《はちまんぐう》の、杉の老木が二本も落雷で裂け、おまけに東京では八十カ所も落雷したと後で新聞に出ていたから、東京にいてももちろん私は、右往左往して仰天したに違いなかったであろう。しかし、東京で雷に遭うのと、逗子で遭うのとでは、私の気持の持ち方が違う。中央気象台で、なまじ有難そうな図表なぞを見せられて、安心して出かけて行ったばかりに、もう腹が立って腹が立って、……今でもその時のことを考えると中央気象台へ押しかけて行って、愚痴のひとつも並べたくなってくる。
が、もう、十何年も昔のことだ。あの時の若い技官二人は今頃は出世して、どこかの測候所長にでもなっているに違いない。
雷さんはイキなもの
昔の物語を読むと、バ
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