くまで下ってゆくのを計っていたのかも知れません。私が三分の二くらいも下って来て、遥《はる》かの下方に曲り角を俯瞰《みおろ》すあたりくらいまで来た時に上流からまずスパセニアの姿が、ポツリと板に乗って視界に入ってきました。
 段々に大きく、向うでも私の姿を認めたのでしょう、笑いながら手を振っています。間もなく姿は大きく、ついそこの上流に! 板の上に突っ立っているところを、見せたかったのでしょう。豊満な水着姿が、つと立ち上がったと見る間もなく、たちまち中心を失って、ドボンと水煙立てて!
 ハッとして中をのぞきこんで見たら、慣れてるとみえて水に押し流されながら、また板に取り付いて這《は》い上がりながら私の方を振り返って笑って、そのまま姿は曲っていってしまう。続いてこれも板に乗った、ジーナが! さすがにスパセニアのように、お転婆な真似《まね》はせず温和《おとな》しく広い板の上に腰を降ろして、手を振りながらやがて曲っていってしまいました。姿は見えなくなっても私の眼の前から、今の二人の姿だけは消え失《う》せないのです。なんという、人魚のような婀娜《あで》やかさだろうと思いました。頸筋《くびすじ》、背
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