? 偽りをいうような人かどうか? ということだけは自慢ではないが一目でわかるつもりだと、しまいには笑い話になりましたが、行き届いた人とみえて、親御《おやご》さんが心配されているといけぬから、手紙をお書きなさい、わたしが明日|小浜《おばま》から出しておいて上げましょうということですから、この父親に手紙を頼んでおくことにしました。
 さて、父親も翌る日出かけて、私はジーナやスパセニアとまたどんなに楽しい日々を過ごしたことでしょうか? 先生、貴方に同じようなことばかり並べ立てていても、仕方がありませんから略しますが、例の岬へも足を向ければ、湖水へもまた何度かいってみました。ジーナとスパセニアと馬を並べて、静かな湖の回りを散歩したり、豪宕《ごうとう》な天草灘《あまくさなだ》の怒濤《どとう》を脚下に見下《みおろ》して、高原の夏草の間を、思う存分に馬を走らせたり……学校はまだ休暇ではないのです。ほんの十日ばかりのつもりで出かけて来た旅が、こんなにも遊び過ごしてしまって、早く帰らなければならぬならぬと心では、絶えず思いながらもつい一日のばし二日のばして、勧められるままにウカウカと、それからまた五、六
前へ 次へ
全199ページ中85ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橘 外男 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング