、一緒に一遍乗りましょうよ……」
 姉妹は手を叩《たた》いたり、笑ったりしていますが、六蔵|爺《じい》だけは汗だくの大奮闘でした。水量も水勢も、いよいよ増してきます。
「嬢さま……まだ出しますだかね?」
「どう? もっと出しましょうか?」
「もういいわよ、スパセニア! そんなに出したって、今水遊びするわけじゃ、ないんですもの」
「有難う、爺や! じゃ、もう、いいわよ! ……ついでにジュールも、厩《うまや》へ繋《つな》いどいて頂戴!」
 そして私たちは、その溝渠《インクライン》に沿った野原をブラブラと小一里ばかりも下って、その辺の景色を見ることにしましたが、そんなに溝渠《インクライン》の話ばかり申上げても、面白くないでしょうからこのくらいで止《や》めておきましょう。ともかくこの溝渠《インクライン》を見ての私の感じでは、規模が大きいとか着想が雄大だとか、そんなことよりもこれだけの施設を整えながら、中途で挫折《ざせつ》してしまってさぞ残念だろうと、父親の心の内を推量せずにはいられなかったのです。
 そしてもう一つは、これらのすべての施設が全部完成して、動き出したならば、きっと日本一の、外人招
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