でもかでも子供みたいにおせっかいを焼いて、つくづくひとり息子なぞに生まれるものではない! と、先《せん》から感じていたのです。
 何の事件も起っていない今日までですらそれですから、九州のこうこういうところで知り合った混血児《あいのこ》の娘と、結婚したいなぞといい出したら、母なぞはびっくりして、眼を回してしまうかも知れません。その驚き顔が、今から眼の前に散らついてくるようです。しかし、どうしても結婚させてくれと私が頑張れば、結局は折れて私のいうことを容《い》れてくれるに違いありますまい。ただその承知させるまでが、大変です。
 死ぬとか生きるとか、かなり狂言も、して見せなければなりますまい。そして結局は容れてくれるとしても、今私は大学の三年ですから、後《あと》一年たって卒業したら、期限つきで許してくれるかも知れません。それとも、もう二、三年たって、インターンも済んで、一人前の医者になるまで待て! といい出すものでしょうか? そんなことばっかり思いめぐらしながら、黙々として道を歩いていたような気がします。
 そして、そんなことばっかり考えながら歩いている私にとって、やがて水門に佇《たたず》ん
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