こから大野木を抜けて小浜まで、自動車道路を作るつもりで、予定していたんですけれど……」
 とジーナはふり向いて、丘の彼方《かなた》を指さしました。口では強そうなことをいいながらも、残念なのかスパセニアも――残念そうといって悪ければ、名残《なごり》惜しそうに工事の残骸《ざんがい》を、見返り見返り金髪を靡《なび》かせながら、男のように洋袴《スラックス》の足を運んでいます。
 これだけの広大な地所を買い占めて、これだけの雄大な大計画を立てた、娘たちの父親という人は……パパは鉱山技師だと、スパセニアはいいましたけれど、一体、どういう人なのだろうか? と、私はそんなことを考え考え、娘たちは仕事の挫折《ざせつ》した父親の心の中を察していたのかも知れません。黙々として歩を運んでいるうちに、潮の香がプウンと強烈に鼻を衝《つ》いて、道が砂だらけになって、ようやく岬の突端へ立つことができました。
 いよいよ、東水の尾岬の突端へ、出て来たのです。工事場からここまで、十二、三町くらいはあったでしょうか? そして、たった今工事場で驚嘆の叫びを上げた私は、この瞬間、またもや嘆声を発せずにはいられなかったのです。見
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