も、何十万円か何百万円か、私なぞには見当も付きません。
「何です、これは、一体? 何を作るはずだったんです?」
「父はここに、ホテルを作るつもりだったんですわ。地下一階の、地上四階の、……一時にお客が、四、五百人くらいも泊れるような……」
 と感慨深げに姉娘のジーナが――昨夜の雑談で、すっかり馴染《なじみ》になって、もうその頃は私も姉娘をジーナ、妹娘をスパセニアと呼んでいましたが、その姉娘のジーナがしゃがんで、感慨深げに中を覗《のぞ》き込んでいるのです。
「東洋一の観光地を作るんだって、随分、楽しみにしていましたけれど……でも、もうそれも、パパの夢物語になってしまいましたわ。止《や》めたんですの……止めたというよりは、お金が続かなくて、できなくなったんですわ」
「悲観しなくたっていいわよ、パパですもの、このまま引っ込んでおしまいに、なりはしないわ。またきっと、立派にやり遂げなさるわ! わたし、パパを信じているわ……今にマンガンが当れば、こんなもの、造作なくでき上がるわ」
「それは、そうでしょうけれど、……でも今のところは、一時立ち腐れね」
「ほう、東洋一の観光ホテルを!」
「そして、こ
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