うのは、どういう人なのだろうか? なぞとそれからそれへと疑問が果てしもなく湧き起って、尽きるところがないのです。しかも、そうした疑問を抱きながらも、寝台《ベッド》や羽根蒲団《クッション》は、相変らずふくふくとして柔らかく、円《まど》かな夢を結ぶには、好適この上もありません。考え込んでいるうちに、蝋燭《ろうそく》の仄《ほのか》な光でまた私は、朝まで何にも知らずにぐっすりと眠り込んでしまいました。
 満ち足りた眠りから醒《さ》めた、快い翌《あく》る日の朝は、日本人の私が慣れない肉やパンのお付き合いではお辛《つら》いでしょうと、特別に私のために米の飯を炊いてくれ、味噌汁《みそしる》も拵《こしら》えてくれました。父親は、マンガンで夢中になっているのでしょう、その朝も早く出かけてしまったとかで、私が起きた時にはもう、姿も見えませんでした。
 さて、五月《さつき》晴れの麗《うら》らかに晴れた青空の下を、馬にも乗らぬ娘二人に案内されて、四頭の逞《たくま》しい馬のいる馬小屋を見て――そのうち栗毛の馬だけは、今父親が乗って行って留守でしたが、もちろんこれらは、農耕用の輓馬《ばんば》ではありません。いずれ
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