しまったのです。
 もちろん、私の心の中からこの家に対する不思議さが、消えてしまったわけではありません。なぜ、こんなところにこの人たちは住んでいるのか? そしてこの家にはなぜ、母親がいないのだろうか? なぞと、いいえそんなことが、不思議だったくらいではありません。今夜娘たちの話を聞くと、いよいよ謎《なぞ》のように解けぬものが、私の心の中で止め度もなく、拡がってくるばかりです。
 妹のスパセニアの話によれば、父親は鉱山技師だというのです。あの周防山《すおうやま》の麓《ふもと》から、明日私の行こうとしている小浜《おばま》のこっちの大野木村の入口まで、この広大な土地を持っているということは、容易なものではありません。大変な金持です。その大金持が、なぜ世の中に隠れて、こんな淋《さび》しいところに引っ込んでいるのか? 引っ込んでいるのはともかくとしても、そして大野木村の開墾地まで、用水を引いているのもともかくとしても、その蜿蜒《えんえん》たる四里の溝渠《インクライン》が、なぜ、ウォーターシュートの水遊びを兼ねているのか? まさか、この二人の娘たちのためばかりではありますまい。
 一体あの父親とい
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