んな莫大《ばくだい》な数量は忘れてしまいました。ともかく、東水の尾というこの字《あざ》だけは、全部父親の物だというのです。そして四里先の大野木村の端《はず》れには、父親の故郷の平戸島から二十軒ばかりの百姓を連れて来て、今、開墾させているというのです。
「そうそう……この奥の方に……家《うち》から半道ばかりいったところに、綺麗《きれい》な湖がありますのよ。柳沼《やなぎぬま》っていって……回り一里半ばかりの、小さな湖なんですけれど、水門を作ってそこから開墾地まで、溝渠《インクライン》が拵《こしら》えてありますのよ。ほんとうは、開墾地へ水を送るために作ったんですけれど、向うにも池《プール》があって……水の上を下《くだ》れるようにって、半分はウォーターシュート用の娯楽に作ってありますの。娯楽にしない時は、荷物運搬《インクライン》用にもなるようにって! とても面白いんですのよ、明日の朝、いって御覧になりません?」
「ほう!」
とまた私は、歓声を発しました。
「大したもんですね、……いってみましょう、見せて下さい……明日、連れてって下さい……でも、夜になると困るから、朝のうち連れてって下さい。そ
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