二十一、二か、三ぐらい、さっきの娘の姉なのでしょう、妹とよく似た面差《おもざ》しはしていますが、これは妹と違って細面の、艶《あで》やかな瞳《ひとみ》……愛らしい口許《くちもと》……隆《たか》い鼻……やっぱりふさふさとした金髪を、耳の後方《うしろ》へ撫《な》で付けて、丈《せい》も妹よりは、心持ち高いように思われます。妹の利《き》かなそうな様子に較《くら》べて、見るからに温和《おとな》しそうな、混血児《あいのこ》にも似ぬ淑《しと》やかさを感じました。
紳士といい今の姉娘といい、またさっきの妹といい、いずれ劣らぬ美しい上品な親娘《おやこ》が、訪《おとな》う人も来る人もない淋しい山の中の一軒家で、一体、何をしているのでしょう? そして、形も崩さず、礼儀正しく生活している不思議さ? しかも今の父親の話によれば、まだ東京へ行ったこともないというのです。
父親が東京を知らないのなら、娘たちとても都は知らないのでしょうが、東京でさえめったに見られないような人たちが、こんな山の中にこんな清らかな住居を構えて、一体どういう身の上の人なのだろうか? と、私は燃えるような好奇心を、感ぜずにはいられなかった
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