、どこからその道が曲ったのか? いつか、御影石《みかげいし》を敷き詰めて枝も撓《たわ》わに、五月躑躅《さつきつつじ》の両側に咲き乱れた、広い道路を上った小高い丘の中腹には、緑の山々を背景にした立派な家が、聳《そび》え立っているのです。豪壮というよりも、瀟洒《しょうしゃ》といった方が、いいかも知れません。
 大きな門柱から鉄柵《てつさく》が蜿蜒《えんえん》と列《つら》なって、その柵の間から見えるゆるやかな斜面《スロープ》の庭には遥《はる》かの麓《ふもと》まで一面の緑の芝生の処々に、血のように真赤《まっか》な躑躅《つつじ》や五月《さつき》が、今を盛りと咲き誇っています。眼も絢《あや》な芝生の向うには、滴《したた》らんばかりの緑の林が蓊鬱《こんもり》と縁どって、まるで西洋の絵でも眺《なが》めているような景色でした。家の右手の方もまた、一面の芝生に掩《おお》われて、処々に蔓薔薇《つるばら》の絡みついた白ペンキ塗りのアーチや垣根が設けられて、ここにも白やピンク、乳白、紅、とりどりの花が一杯に乱れています。
 その間に、新築間もないらしい日本家屋と白壁作りの異国風な情緒を漂わせて、洋館が聳《そび》
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