な六階建てのデパートの、建築資材にするのだという。湖の回りにも、人夫や測量師|体《てい》の男たちが入り乱れていた。
 邸《やしき》の焼け跡では、淋《さび》しく花をつけた蔓薔薇《つるばら》の二、三枝を折りとった。あとで、石橋氏の墓前に、供えたいと思ったからである。

 大分雑草も刈りとって、自動車道路が設けられてあるから、昔日の高原の趣きとは、いくらか違っているかも知れぬ。待たせておいた車を駆って、いよいよ湖岸西北方、故人が涙を呑《の》んだ例のマンガン鉱山を、南方の碧空《へきくう》に仰いだ小山の麓《ふもと》に、石橋弥七郎氏の墓を訪《おとな》う。
 水番小屋より、ここまで二十一丁……それがこの辺産出の三根石《みつねいし》というのであろう、鈍い紫色の膚を光らせて、さして大きからぬ墓一基、黙々としてそそり立つ。
 訪う人も来る人もなく、ただ一基……折しも陽《ひ》雲にかくれて晩春の気|蕭条《しょうじょう》! ここに数奇《すうき》の運命の人眠る。裏の林に名も知れぬ小鳥|啼《な》いて、鳥の心……石橋氏の心……ただ何となく、涙のしたたり落ちてくるような気持がする。
 なむまいだぶ……、なむまいだぶ……
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