り、といった言葉がしみじみと思い出される。この大規模な溝渠《インクライン》を設けた人も、そこに遊び戯れていた娘たちもすでに亡く、その話を私に伝えてくれた青年も、もはやこの世の人ではない。
 人の命の脆《もろ》さ儚《はかな》さが、今更のように胸に迫ってきて、哀切|一入《ひとしお》深きものがある。

 東水の尾岬の突端に立つ。なるほど、故青年が激賞したとおり、天下の大景観である。
 断崖《だんがい》の直下、脚下|遥《はる》かの岩に砕くる数丈の飛沫《しぶき》は、ここに立つもなお、全身の濡《ぬ》れそぼれる心地がする。魂《こん》飛び眼|眩《くら》めくというのは、こういう絶景を形容するに用いる言葉であろう。
 万里の波濤《はとう》を俯瞰《ふかん》し睥睨《へいげい》する大ホテル現出の雄図、空《むな》しく挫折《ざせつ》した石橋弥七郎氏の悲運に同情するもの、ただひとり故柳田青年のみならんや!
 見終って、地下工事場跡へ歩を転じた時、水番の六蔵の出迎え来たったに逢《あ》う。
「到頭あのお若けえ書生さんも、お亡くなりなせえやしたか? そりゃまあ、お気の毒なこんで……さぞ親御《おやご》様も、お嘆きでござらっし
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