えりもと》から、冷水《ひやみず》でもブチカケられたように……スウッと誰かが入って来たと思った瞬間、怺《こら》え怺えていた恐怖が一時に爆発して、
「誰だ、そこにいるのは!」
と夢中で精一杯の気力を奮い起しました。その声に驚いて、次の間から看護婦が飛んで来てスタンドを拈《ひね》っても、ただ、スタンドが天井に大きな影を投げているだけで、家の中は森閑《しいん》として、深夜の眠りを眠っているだけなのです。誰もいはしないのです。が、確かに閉めておいたはずのそこの障子が、半分ばかりあいているのを見た時には……。
「まあ、誰か知ら? あんなとこをあけて!」
と看護婦がびっくりして叫んだ時には、またゾゾーッと、頭から冷水をブチかけられたような気がしたのです、先生……私の家には、看護婦が二人おりますでしょう? 仰々《ぎょうぎょう》しく二人置いてあるわけではないのです。一人でいいのです……一人でいいのです……けれども一人でいるのなら暇を欲しいと、それ以来、看護婦が怯《おび》え切っていますので……」
そしてしばらく言葉を切って、胸を休めていた。
「……ジーナが来たのかスパセニアが来たのか……それはわかり
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