井をみつめていたが、休むとも休まぬとも返事がなく口を開いた。
「……もう、私には……自分でも、生きてる日がそう長くないことは……わかっているのです。ついこないだも……ついこないだも……二十日くらい前になるかも知れませんが、こうして寝ていますと……真夜中の一時二時頃に、なっていたかも知れません。ギョッ! として、突然全身が凍り付いたような気がしました。先生、貴方の今座っていらっしゃる、そのスグ背後《うしろ》の廊下を……」
 というのであった。
 サ……サ……サ……サ……と幽《かす》かな音をさせて、……袴《スカート》の裾《すそ》でも、障子に触れるような音であったという。その静かな音をさせて、誰か二階の上り口から、こちらの方へ跫音《あしあと》を忍ばせて来る様子であった。
 譬《たと》えようのない恐ろしさに、震えながら青年は息を殺していた。跫音はかすかにかすかに、段々に座敷の方へ、近づいて来る。
 ス……ス……ス……ス……とそこの障子が少しずつ、少しずつ開き始める。
「確かに誰か、廊下に膝《ひざ》まずいて、引き手に手をかけている様子です。冷たい風が頬《ほお》を撫《な》でて、竦然《ぞっ》と襟元《
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